歪み(ひずみ)とは何か



2016年もおかげさまでいろいろと商品開発がすすみましたが今年最後の新商品としてKORG製の現代版真空管「Nutube」を使ってEQP-Nutubeを製作しました。
http://store.shinya-s-studio.com/ca4/53/p-r-s/
EQP_Nutube_T1.jpg 
この記事では「歪とはなにか」について触れつつEQP-Nutubeの機能を紹介したいと思います。
今回も長文の予感です(笑)

まず歪みについて説明する前に電圧を増幅するプリアンプについて書きます。
みなさんは「プリアンプ」と言われるものの動作原理についてどこまで理解されているでしょうか。

「とりあえず入力したものがつまみをひねると大きくなって出てくる」

そんな感じではないでしょうか。
プリアンプにはトランジスタ、真空管、オペアンプなどいろいろな部品を中心に設計されたいろいろな回路でできているわけですが動作原理はほぼ同じで
「入力された信号で電源電圧をコントロールして出力する」
という感じになっています。つまり出力された信号は入力された音を聞いているというよりは電源のコントロールされた音を聞いているという感じです(わかるでしょうか?)。なので電源の質はかなり重要で電源ケーブルや電源周りを変えると音が変わるのも理論的に合っています。

話は戻って歪みについてですが波形で説明します。今回は分かりやすく一番シンプルな波形である1kHzのサイン波で説明します。

2.png 1.png
1kHzのサイン波は画像のような波の形、周波数成分も1kHzしかいません。

3.png 4.png

それが増幅していくとある点から波形の頭が潰れていきます。
周波数成分も1kHzとは関係のない成分が出てきます。これが倍音です。

なぜある点から波形の形が変わるのか、倍音が出てくるのかですがこのある点というのが上で書いた電源電圧です(デジタルやエフェクタ類の歪みの話とは別です)。電圧を増幅する原理が上記のように電源電圧を入力信号でコントロールするため、増幅回路の定数で計算上は大きくなりますが電源電圧を超えて増幅できません。それもオペアンプなどの新しい素子だと電源電圧ギリギリまで増幅できるのですが真空管だと最初から若干形が崩れて電源電圧に近づくほど波形が変わり歪みとして現れます。

歪んだサイン波の今回の画像は上下対象に歪んでいます。上下対象に歪むと奇数次倍音がでてきます。奇数次とは奇数倍の倍音です。1kHzなら3倍、5倍、7倍、、、の3kHz、5kHz、7kHz、、、です。SSL 4000などはグランド(0V)を中心に±18Vの両電源とかで動いているので増幅していくと+18V/-18V付近で上下等しく歪んでいきます。中心が0Vではなく例えば+10Vにいた場合、上は8Vまでしか増幅することができません。

そして真空管は+250Vなどの片電源で動くのでバイアス(偏り)をかけて中心を電源電圧の半分まで持って行きます。そうして電源電圧の半分(125V)を中心に上下対象に振らせることでもっとも歪みを少なく最大振幅をとることができますが真空管の特性上、徐々に上下非対称に形が変わっていきます。上下非対称に歪むと周波数成分的には偶数次倍音もでてきます。偶数次とは1kHzに対して2、4、6、、、kHzです。

ここまでが前置きです。
やっと本題ですが人間の脳的には奇数次倍音が加わると
「もとの音から変わったぞ。歪んでいるのかな?」
と感じます。
以前、もとの音(ここでは1kHz)にどれくらい倍音の合計が含まれているかというのをTHDで表し、0.1%程度倍音の合計がいると歪みと感じると書きました。奇数次倍音が0.1%を超えると歪みと感じるのだと思います。

そして偶数次倍音がでてくると脳的には歪みとは気付きにくく、真空管が歪んだときの特性に似てきますので真空管の音に慣れている方は真空管っぽいと感じるのかもしれません。

EQP-NutubeもNutubeという現代版真空管を使った機材なのでそのままでも入力を増やしていくと真空管のような偶数次倍音が多めの特性となっていますが、今回はバイアスというつまみをフロントパネルに出しバイアスを変えることができます。

バイアスは片電源であれば上記のように真ん中にいることで一番歪みにくくなり最も高い出力が望めます。しかしあえてバイアスを上下させることでより上下非対称の波形を生み出すことができ、より真空管的な歪みサウンドを得ることができます。

バイアスの電圧は主に真空管の入力にかけます。バイアスは通常マイナス方向にかけていくので「浅め」「深め」といいますがNutubeではプラス方向にかけます。バイアスの電圧を増やすとややこしいですが出力の中心は逆に0に近づきます。(説明は省きます)そうすると波形の下部分が歪んできます。バイアス電圧を減らすと出力の中心は上がっていき電源電圧に近づくため出力波形の上部分が歪んでいきます。

EQP-Nutubeは波形の上のみ、下のみのどちらも可能にしました。これにより元から偶数次歪みが多く上下対称でないソースにも対応できます。また動画をつくりますので是非ご覧ください。

今回も長文でしたが上記内容を理解していただいてEQP-Nutubeを是非使ってみてください。
ちなみに歪みは通常でも割と多め、特性も高域はNutubeの影響でロールオフしています。

以下毎度のことですがコピペを貼っておきます。
P.S.この「理論、知識」のカテゴリに関しては音楽的、DIY的な観点から書いています。間違いなどありましたら是非お知らせください。訂正または削除させていただきます。

コメント

非公開コメント